何か書こうと思いつつ、最後の投稿から早三年経った。
僕はその間アメリカで半年間の研究留学をこなし、その後しばらく博士課程を東大で過ごした。そして、愛知県岡崎市の分子科学研究所に移った。愛知に移って半年した頃、新型コロナウイルスがどこからともなくやって来た。
一年前(2020年4月)の緊急事態宣言では、日本各地の大学がそうであったように、僕が過ごす分子科学研究所でも学生は原則在宅することが求められた。自分の研究には実験が不可欠であるから、数ヶ月の来所禁止命令は手痛い損失だった。6月頃に来所が認められると、また徐々に研究の進捗を生み出せるようになった。幸いにも、現時点では当初の予定通り2022年3月に博士号を取得できる見込みである。
しばらくすると、就職活動が始まった。僕はアカデミアに残る気は全く無かったので、自分の専門知識を活かすべく、企業の研究職ポストを狙うことにした。コロナ禍のため、会社説明会や面接は対面ではなく、すべてオンラインで行われた。僕は希望する条件を満たす会社に5社ほどエントリーし、3社で面接に進み、1社から内内定をいただけたので、その時点で就職活動を終えることにした。東大の博士課程にいれば就職先などすぐ決まるだろうとたかをくくっていたが、実際はそうでもなく、採用面接ではわりとあっさり落とされた。何はともあれ、自分の専門に強く関心を示してくれた1社で来春から働けることになったのは幸いである。
就職活動が終わって数ヶ月経った先日、内内定先の研究所を訪問した。先述したように僕は対面式の就職活動をまったく経験しなかったから、これが就職活動の過程で民間企業を訪れる初めての機会だった。若手社員に研究所内を案内してもらったあと、おそらく自分の配属先の先輩になるのであろう社員としばらく雑談した。たった2時間ほどの見学会だったが、内内定先の会社は研究に必要な装置や社員への福利厚生を潤沢に用意していることがわかった。会社員として働けることが、ますます楽しみになってきた。
3年ぶりの投稿であったから、まずは簡単にその間の僕の経緯を記した。博士課程の就職活動に関しては、しっかりとした記事を執筆している先輩方が少なからずいらっしゃる。それをネタにブログ、noteで収益を上げられる才覚には素直に感嘆するが、僕はそれを真似ようとは思わない。なぜならば、僕には就職活動の経歴といった個人情報の塊をネットに載せる勇気はなく、かつ、そんなことは気心の知れた後輩にでも酒を奢りながらベラベラと話す程度でちょうどいい、と思っているからである。後輩を気楽に飲みに誘えるよう新型コロナウイルスが早く収束してくれることを願い、今日は筆を置く。