今日は江東運転免許試験場に行っていた。
初回の免許更新期限が近付いていたからだ。
日曜日ということもあって、試験場は免許更新を求める人たちでごった返していた。
受付、手数料支払い、適性検査、写真撮影の流れを終えるまでにほぼ一時間を要した。
自己顕示欲の強そうな服を着た男性、スマホでアニメを見ている老人、隙を見て母親から離れて歩き出す子供等、さまざまな人々を見かけた。
行列はなかなか進まなかったから、僕は時折彼らを観察して暇つぶしをした。
ようやく初心者運転者講習の受付を終え教室に向かっていると、一人の男性から声をかけられた。
僕の名前を呼んでいる。
話を聞いてみると彼は僕のフォロワーで、僕と同じく東大の4年生だった。
2年ほど前からTLでよく見かける人だったが、こうして彼と対面するのは初めてのことだった。
なぜ僕の姿が分かったのか、と彼に問うと、僕たちがまだ駒場キャンパスに通学していた頃、僕の知らないところで共通の友人が「あれがマーブルだよ…」と彼に教えたのだという。
おせっかいな友人を持ったものだ。
講習の開かれる教室に入り、せっかくの機会なので彼としばらく世間話をしていた。
共通の知り合いもわりと多かったし、学部も同じらしい。初対面ながら、あまり会話が途切れることはなかった。
そのうち中年の警察官が入ってきて、早口で講習を始めた。
「みなさんにとっても2時間は長いと思うので、早く終わるよう努めます。ご協力をお願いします。」とまず彼は喋った。
2年前に免許取得するため初めて江東の試験場に行ったとき、短気で不愛想な警察官に応対されて僕は無性に腹が立った覚えがあったが、今回はそんな不快な思いをせずに済みそうだ。
話が早くて助かる。
さっそく講習の中身に入る警察官の声を聞きながら、僕はそう思った。
講習ビデオは、まず交通事故によって娘の命を奪われた父親の話から始まった。
画面は将来美人になりそうだった女の子を写し、その父親は自動車運転が本来危険行為であること、いつでも運転者は加害者になりうること等を、寂しげな表情で語っていた。
僕は未婚だから我が子への愛情といった概念は未だうまく呑み込めないのだが、彼の言葉と表情はそれを突然絶たれた彼の絶望を僕に想像させた。
ほかにも、講習ビデオは事故の起きやすい様々な状況を例示していた。
こうしたことを聞くのは教習所を卒業して以来だが、さいわいほとんど僕が運転時に注意していることだった。
僕の運転技術はお世辞にも上手とは言えないが、僕はそのぶん無理な運転をしないように心がけている。
そのスタンスのおかげかさいわいこの2年間無事故無違反でだったし、今後も続けていきたいと考えている。
講習ビデオが終わると警察官は例の早口で、ふたたび事故の起きやすい状況、実際に都内で起こった事故等を説明した。
僕が毎日通っている東大付近の言問通りでもかつて大きな事故があったそうだ。
交通事故は他人事ではない、改めてそう思った。
警察官の言葉通り講習は予定より随分早く終わり、僕は新しい免許証を手に入れた。
今回免許証の顔写真は、前のものより随分とまともな表情をしていた。
これから3年間は臆せず免許証を身分証として提示できそうである。
このまま無事故無違反を維持して、次の免許更新でこそゴールド免許を取得したいものである。
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