東大の学祭は年二回行われる。一つは五月に本郷キャンパスで行われる『五月祭』であり、もう一つは十一月に駒場キャンパスで行われる『駒場祭』だ。
本郷キャンパスには東京大学の教育・研究機関の多くが集中し、多くの学生が専門課程をここで学ぶ。それゆえ、五月祭では通常の学祭らしい模擬店・ライブイベントなどのほかに、本格的なアカデミック企画が多く催されていることが特徴的である。
僕は大学一年の頃五月祭に模擬店を出店し、大学三年では所属学科の学術展示を手伝った。
あいにく今年は研究室生活が忙しく、僕はほとんど五月祭にコミットできなかった。
企画者として関わったイベントはないし、そもそも土曜日は研究室のセミナーがあったので五月祭どころではなかった。
日曜日にようやく時間ができたので、午後から五月祭に出かけたのだった。
まず自分の所属するサークル、地理部の立体日本地図を見に行った。
昨年の駒場祭では七年の歳月をかけ完成した立体日本地図が展示されていたが、今回の五月祭ではその一部のみが取り扱われていた。
おそらく駒場祭の時ほど広い展示部屋を確保できなかったためであろう。
その代わり、合宿で訪れた恵那、多くの東大生が暮らす世田谷などについて、新たにピンポイントな立体地図が製作され、展示されていた。
せっかくなので高校生の知人をそこに呼び、立体地図を見てもらった。
ここまで規模の大きな立体日本地図は見たことがないからか、知人は熱心に写真を撮り、一緒に来ていた友達と地図について興味深げに話していた。
次に理学部一号館で物理学科による学術展示を訪れた。
実験コーナーに行くと、ちょうど友人が超伝導体に関する実演を行っていた。
自分たちでいくつかの無機化合物を混合・焼成し、超伝導体を作ったのだという。
実際に友人の作った結晶は、液体窒素中で超伝導を示していた。
超電導体の上から磁石をそっと乗せると、磁石は宙に浮いていた。
また、磁性流体に超伝導体を近づけると、磁性流体が特異的な挙動を示していた。
超伝導体内には磁場が侵入できない(マイスナー効果)ので、磁性流体は超伝導体を避けて動くのである。
友人の作った超伝導体。磁石が宙に浮いている |
真空のゆらぎはきわめて微小なので、実験で観測することは困難だったそうだ。
地上十階で実験を行うと建物自身の揺れでうまく観測できなかったという。
地下二階でも同様に実験を行ったが、なんらかの要因で周期的な揺れが生じ、本来観測したい真空揺らぎは観測できなかったらしい。
ポスター担当の学生は、「東大の近くには地下鉄が通っているし、微小な揺れを観測するにはあまり適切な場所ではないのだと思います。もっと振動の少ない場所を確保しなくてはいけなかったのでしょう」と語ってくれた。
最後に、有志による女装子カフェを訪れた。
東大は女装文化が盛んで、駒場祭では毎年女装コンテストも開催されている。
今回の女装子カフェでは、過去の女装コンテスト出場者が(もちろん女装して)給仕として飲み物を提供していた。
後ろのほうではお酒を飲んで陽気にラップを口ずさむ男たちもいたが、客の多くは日頃から熱心にツイッターに傾倒している東大生たちだった。
カフェ内はちょっとしたオフ会のような様相を示していた。
「昔は僕も熱心にツイッターをやっていたが、最近は本業が忙しくなってツイートを見る時間も無くなってしまった。だが、たまにこうしてフォロワーとオフ会するのも刺激になっていい。」そんなことを思いながら、僕はフォロワーとしばらく歓談していた。
今年の五月祭はたった三時間の滞在だったが、普段見かけない知人たちに会い会話を楽しめたので、充実していたと感じる。
また十一月の駒場祭も同じように過ごせたら良いものだ。
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