2016年4月24日日曜日

Microscopic Interests

「君は日本人にしては英語を話す、どこで勉強したんだ?」
「さあ……ずっと日本に暮らしているし、英語は学校でしか学んでいませんよ。強いて言うなら僕は言語が好きです。それにもともとお喋りなもので」
「俺も言語は好きだ。実は日本で暮らし始めてから日本語を勉強し始めた」
「ああ、それでよく日本語を喋るんですね。どうやって勉強したんです」
「日本語講座に通っている。ここにいる日本人の連中に教えてもらうのも手だったけど、俺は独立心が強いから頼りたくなかった。同僚に『○○くん、教えてください~』と頼むの、ダサいだろ。講座にはもう二年ほど通っているが、最近2級をとったのがちょっとした自慢だ」
「すごい……僕はそこまで言語をやりこめる気はしません。でもイタリア語、あれは好きです。響きが陽気だし、イタリア人も陽気。イタリア語は挨拶を覚えているだけでも面白い。去年イタリアに行ったときそれを感じました」
「そうだな。イタリア人は面白いやつらだ。どこに何日行ったんだ?」
「ローマに一日だけ。フュミチーノ空港で乗り継ぎをしたとき、ついでにローマを見てきました。食べ物は安くて美味しかったし、建築物は美しかった。また行きたいですね。貴方は行ったことありますか」
「ヴェネツィアに二日だけだな」
「じゃあ僕と似たような感じですね」
「同じく乗り継ぎだよ。乗り継ぎで街を訪れるのは金がかからなくて賢明な旅行プランだと思うね」
「たしかに。でもローマではスマホを掏られたので結構高くつきましたね」
「お気の毒に。君はイタリアに行けばどう見ても『外国人』だからな。スリの標的になりやすいんだ。それに海外の都市は日本ほど安全じゃない。いや、日本が安全すぎるんだ」
「同感です。もうちょっと注意すべきでした。それにしてもローマは危ない街でした。盗難証明書をもらうために警察署に行ったけど、盗難にあった人でいっぱいでしたよ。警官も人の名前が覚えるのが面倒みたいで、僕たちを『ジャポネーゼ!』『フランチェーゼ!』だとか、国籍で呼ぶんです。さすがに苦笑いしましたよ。ところで貴方は昔ベルリンにいたんでしたね。ちょっとだけ旅行したんだけど、安全で清潔で、いい街でした」
「そうだろう。ベルリンはいいところだった、とても」
「ところで……貴方はなぜ研究者になろうと思ったんですか」
「好奇心が強いからだ。なぜ空は青いんだ?宇宙は真っ暗なのに、空は青く見える。よく考えたら不思議じゃないか。自然にはそれ以外にも不思議なことがあふれている。でも多くの人はその理由を知らずに過ごしている」
「なるほど。物理や化学をやった人間ならそれはわかるだろうけど、みんながそういった分野を知っているわけではないですね」
「この机に使われている木とプラスチックだってそうさ。どれだけ多くの人がこの二つの違いを知っている?多くの人間はそれを知らずに過ごせるだろう。でも俺はさっき言ったように好奇心が強いから、それだと我慢できないんだよ」
「その気持ちはわかります」
「今まで誰も知らなかったことを知りたい。自分でそれを解明したい。そう思ったから研究者になったんだ」
「とても面白い話ですね。誰も知らないことを自分で見つける、というのは僕も何となく持っている願望です」
「博士課程に興味はないのかい」
「さあ……わかりません。研究活動が好きになるかわからないし、お金の問題もある。可能性は排除しないですが」
「いや、別に強制しているわけじゃないよ、君の人生だ、君が自由に選んでいい。それに修士卒で企業に行ったって面白い研究はできる。ただ、研究が好きなら行って損はしないだろうさ。」
「どうでしょう……僕は研究を始めたばかりだし、まだわからないことだらけです。あと二、三年以内にはしなくちゃいけない選択ですけど、今はなんとも言えないですね」
「なるほど。じっくり考えなさい。じゃ、俺は解析があるので失礼するよ。また後で」
「お疲れ様です。面白い話ありがとうございました」

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